ニューヨーク株年初来安値!なぜ株価が下落したのか解説します【2022年5月】
5月9日の米国株式市場ではダウ工業株30平均が3営業日続落し、3月上旬以来、約2か月ぶりに年初来安値を更新した。米長期金利が一時、2018年11月の水準まで上昇し、アップルやAmazonなどのハイテク株への売り圧力となった。中国の景気減速に対する警戒も強まり、株式、国際、原油など幅広い資産が売られる展開となった。世界中の投資家がリスク回避に動いている。
こちらは5月10日の日本経済新聞から引用したものです。
これまで好調に見えた米国の株式市場がなぜ下落しているのか解説していきます。
1分でわかる解説。
5月9日のダウ工業株30平均は、2か月ぶりに年初来安値を更新しました。なぜ株価が下落したのでしょうか。2月の終わりからロシアのウクライナ侵攻が始まりました。ロシアは世界有数のエネルギー大国です。ロシアからの原油の輸出が滞るという懸念から原油価格が高騰。原油価格高騰から起因して、原材料価格が高騰。様々なものの価格が上がるインフレが発生しました。インフレ抑制のため、FRB(アメリカの中央銀行)は利上げを決定。長期金利の指標になる10年物国債利回りは3年半ぶりに3.2%まで上昇。利上げをすると個人・企業ともにお金を借りる金利が高くなるので、消費や投資が冷え込みます。企業はモノを売るために、コスト削減、値下げや価格維持の努力を行うため、結果的にインフレを抑制できるという理論です。世界の投資家は、これまで割高感のあったアップルやAmazonなどのグロース株を手放し、安定資産である国債へシフトする動きとなったため、株価が下落したとみられています。
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ダウ工業株30種平均とは?
米国のダウ・ジョーンズ社が算出、発表している米国を代表する株価指数です。ニューヨーク証券取引所やナスダック市場に上場している合計30銘柄を対象に算出しています。算出方法は、後に日経平均株価の算出にも応用されたダウ式修正平均という方法で、銘柄入れ替えや権利落ちなどがあっても過去との連続性を失わないように修正が加えられています。30銘柄の中にはAPPLEやマイクロソフトなど名だたる企業が採用されている一方、グーグルやAmazon、フェイスブック、テスラなどは採用されていません。30銘柄は必要に応じて見直しが行われています。
ポイント
APPLEとAmazonは30銘柄の中でもずば抜けて時価総額が大きいため、この2銘柄が下がるとダウ工業平均も下がりやすい傾向にある。
長期金利が上がるとなぜハイテク株が売られる?
一般的に金利が上がると、株価が下がると言われています。米国長期金利の指標になる10年物国債利回りは3年半ぶりに3.2%まで上昇しました。コロナ以降、多くの投資家がハイテク銘柄を中心とした、いわゆるグロース株に注目し株価も成長してきましたが、ここにきて「割高ではないか」という声も聞こえてきており、ハイテク株の株価が下落する前に、利回りが高く安定した国債にシフトするという動きから株価が下落しているとみられます。
また、中国のゼロコロナ政策による中国経済の失速、それが世界経済に波及するという見方から原油価格なども下落しています。
なぜ長期金利が上がったのか?
アメリカではインフレ率が非常に高くなっており、国民の生活を苦しめています。そのインフレ率は8.5%と1981年以来最も加速。食料とエネルギーにかかるコストの上昇が主要因。そのため、アメリカの中央銀行にあたるFRBはインフレ抑制のため、金利を上昇させる方針です。銀行が利上げをすると個人や企業の資金借り入れコストが高くなります。金融当局はこれにより、モノやサービスの需要が抑えられ、物価の上昇が緩和されると期待しています。
つまり
①ロシアのウクライナ侵攻により原油価格が高騰。
②原油価格高騰から起因して、原材料高騰。様々なものの価格が上がる。(インフレ)
③インフレ抑制のため、FRBは利上げを決定。
④利上げにより、割高感のあるグロース株から安定資産である国債へシフトする動きとなった。
という流れで、最終的に米国株式市場が下落したと考えています。
今後もウクライナ侵攻の動向や、金利の動きに注目していきたいと思います。